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お客さまと想いを一つにし、共に創る。“共想共創カンパニー”がめざす、組織のあり方と人材への想い

インタビュー Interview

お客さまと想いを一つにし、共に創る。“共想共創カンパニー”がめざす、組織のあり方と人材への想い

代表取締役社長 金澤 明

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キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)は、2025年を見据えた長期ビジョン「VISION2025」を
2020年に打ち出し、新たなビジネスモデルの構築や転換をはかっています。

代表取締役社長 金澤 明より「VISION2025」策定の背景や人材に対する考え方、キャリア採用にかける想いをインタビュー形式でお伝えします。

人を大切にする経営で、今も変わらず意識していること

—— 2019年3月に代表就任されてから、約3年半どのような想いで経営に携わってきたのでしょうか。

社長に就任した後、社員に向けて5つほどメッセージを出しました。

1つ目は、「結果は重要だけど、プロセスも重視したい」ということ。しっかりと計画し、行動したうえで結果を見てさらに次のアクションにつなげていく、いわゆるPDCAを回していくことを大事にしたいという話をしました。

2つ目は、「何をKPIとして設定するかが重要だ」ということ。KPIが間違っていると、望まない方向に向けて無駄な努力をしないといけないので、そこは避けていきたいと伝えています。

3つ目は、「数字だけでは読み取れないことはいろいろあるので、現実を見よう」という話です。「現地」「現物」「現実」の「三現主義」という言葉があると思いますが、それに加えて、我々のようなSI企業ですと人が大事なので「現人」も加えた「四現主義」をしっかりやっていこうと。

4つ目は、企業には継続的な成長が必要なので、「短期的な業績変動に一喜一憂せず長期的な目線で物事を見ていこう」という話です。

そして最後に、社員が実力を発揮できる環境を作るのが社長としての私の仕事なので、「皆さんは思い切り仕事に取り組んでください」と伝えました。

2019年の4月に発信しているのですが、それから3年以上経った今年も、実は同じメッセージを出しています。この5つは変わらず私が意識していることですね。

会社を率いる立場としてはこの3年間、会社の成長と社員の処遇の改善や向上を目指してきました。キヤノンマーケティングジャパン全体で2025年までにITソリューション事業で売上3000億円という目標を掲げているので、我々もそれに貢献するというのが1つの財務目標。それからもう1つは、しっかりと利益を出すということ。その目的は投資です。我々の財産は人だと考えていますので、社員への投資ですね。

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お客さまに寄り添い、想いを共有する

—— キヤノンITSの強みとはどういうところですか。

当社の前身である住友金属工業が行っていた数理技術や、データセンターの運営力といった個々の強みはあるんですけど、お客さまに「キヤノンITSは何が強いんですか?」と聞かれた時には、やっぱり人ですという話をしています。「うちは最後まで逃げませんよ」って(笑)

その上で、2025年に向けてのありたい姿として「VISION2025」というものをまとめたのですが、それに際して自分たちの強みは何だろうと改めて振り返ったんですね。 いくつかの会社が統合してできた組織なので、それぞれで持っていたDNAがあり、それこそが我々の強みなんだということで3つにまとめました。

1つは「お客さまに寄り添う心」。住友金属工業時代に持っていたのは、自分たちの仲間が使うシステムをしっかりとしたものにしたいという想いだったんですよね。製造業ではよく言われることですが、自分の次の工程で仕事をする人がお客さまだという考え方で「次工程はお客さま」という言葉があります。それをすごく大切にしてきたので「お客さまに寄り添う心」という言葉を掲げました。

2つ目は「先進技術への挑戦魂」についてです。当社のソリューションで「WebPerformer」という、プログラムを自動的にコーディングするプラットフォームがあるのですが、これは主にキヤノン向けに組み込みソフトの開発をやっていたエンジニアたちが作ったんですね。キヤノンは何でも自動化するのが好きなので、プログラムの自動化にもチャレンジしてくれと言われて、かなり苦労しながらやり遂げました。当初はCOBOLを使いましたが、さらにその後Java言語でも自動コーディングにチャレンジ。組み込みのソフトをやっている人たちにとって技術的にチャレンジングなことだったと思うんですが、そういう人たちから感じたのが「先進技術への挑戦魂」ですね。

あともう1つは、アルゴ21という独立系のソフトウェア企業と一緒になったのですが、彼らから学んだのは諦めないということです。どんなに苦しくなっても仕事をやり切る姿勢がものすごくあるんですね。そこから3つ目の「最後までやり切る胆力」という言葉ができました。

この3つが自分たちが持っているDNAなんだと認識を合わせて、2025年に向けて再スタートを切りました。今後変わることはあるかもしれませんが、今持っているDNAを自分たちの強みとしてさらに進化させていきたいと思っています。

—— 言葉を作る時に新しくキーワードを掲げる会社もあると思いますが、キヤノンITSの場合は今までそれぞれの会社が持っていたDNAを大切にしながら言語化していったんですね。2025年を見据えた事業ビジョン「VISION2025」では「先進ICTと元気な社員で未来を拓く"共想共創カンパニー"」を目指されていますが、この言葉ができた背景を聞かせてください。

これまでも中期経営計画は5年ごとに作成していましたが、会社としてどこをめざすのかは明示できていなかったんです。そこで作ったのが「VISION2025」です。その際に若手社員の意見も聞いたのですが、その若手の中から「共想」という言葉が出てきたんです。「共創」はいろいろな企業で使われている言葉ですが、お客さまと想いを1つにする「共想」という言葉が出てきて、「これはいいな」と思いました。そこから「共想共創カンパニー」という言葉ができるまでには少し時間がかかりましたが、やはりお客さまの想いを起点にして我々もビジネスを展開していきたい、という想いがベースになっています。

具体的には「ビジネス共想モデル」「サービス提供モデル」「システムインテグレーションモデル」の3つの事業を展開していきます。特に、お客さまの想いを起点にするという意味では、ビジネス共想モデルが我々のビジネスのキーになると考えています。その基礎にあるのがお客さまとの信頼関係やエンゲージメント経営と言われるような社員との絆で、そこを大事にしてお客さまと一緒にビジネスを創っていくということが、基本的な共想共創カンパニーの考え方だと思っています。

—— これまでSI受託案件が主軸だったところから、ビジネス共創モデルというビジョンをうち立てたことにより、具体的にはどういったところが変わりましたか?

全部というわけではないのですが、確かに以前はお客さまの方で要件をある程度詰めた後に、「こういうものを作って欲しい」と依頼をいただくことが多かったのです。当社としてはそれをしっかりと遂行するためのプロジェクトマネジメントやエンジニアリングは強化してきたのですが、お客さまがおっしゃる「何を作りたいか」というのが必ずしも正解でないと思うこともあったんですね。今はやはりそこに踏み込んでいかないと、我々としての価値が出せないのではないかと考えています。お客さまのビジネスのゴール設定はお客さまが行いますが、そのゴールをしっかりと理解して課題が何なのかを一緒に考えるところから入るイメージです。

もしかしたらお客さまが考えている課題と実際の課題が違うこともあるかもしれない。あるいは感じてはいるけれど見ないようにしている課題もあるはずなんですよね。そういうところを掘り起こして、お客さまのゴールに向けた最適なシステム基盤を一緒にどう作るかの構想から、私たちが入るようになってきました。

ですから、今までよりもっと上流工程から関わるビジネスモデルに変わってきていると思いますね。ビジネス共想モデルは場合によってはお客さまのビジネス構想から一緒に行うモデルですし、今だと「DX参謀」と打ち出してお客さまの経営者と一緒にDXについて議論するということもやっています。システムインテグレーションの方もここ最近では「課題解決型SI」と謳っていて、お客さまの課題をしっかり把握した上で、そこからこう作りましょうと提案していく活動が増えてきていると思います。現場でやっている社員たちも今までのシステム構築とは性格が変わってきていると考えていますし、そこに気づいてくれたお客さまから声をかけていただけることが増えました。

——「元気な社員で未来を拓く」という言葉もキヤノンCITSらしいなと思ったんですが、どういったところから生まれたんですか?

「VISION2025」のキーメッセージを考えた時、最後に担当役員が「元気な」を入れたいと言ってきたんですね。私がその時思ったのは、自分たちが元気ではないのにお客さんを元気にさせられるわけがないよな、と。前面に出る社員だけじゃなく会社全体で元気が良くなれば、その雰囲気がお客さまに伝わって、「この会社に頼もう」「この会社の提案ならきっといいものだ」と思ってもらえるのではないかと考えて、「元気な」を付け足しました。

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共想共創人材の育成と採用を強化

—— ビジョンの実現を推進される中で、人材育成や採用がとても大事になってくると思います。そのあたりはどう進めていますか?

3つの事業モデルがそれぞれ違う性格の人材を必要とするので、人材育成は当然必要です。

中でも、ビジネス共創モデルが一番のキーとなりますので、まずはそこをやれる人材の育成から始めました。具体的には、「共想共創塾」という研修プログラムを作り、最初にビジネス共創モデルのためのコース、ビジネス共創人材コースを設けました。2025年までにビジネス共創人材を2020年の5倍にするという目標を掲げ、対象者は自薦と他薦で事業部門から募集。かなりハードなプログラムですが、トレーニングを積んだ結果、確実に人が育ってきています。

ビジネス共創人材コースが軌道に乗ってきたので、次はサービス創造人材の育成にも取り組んでいます。コアメンバーは十数名ですが、実際に現場で動く人も育てないといけないので、基礎コースも2022年から始めました。

システムインテグレーションモデルについては、基本的にはSEの育成になるので今までもずっとやってきたところではありますが、先ほどお話したようにお客さまの課題を起点にしたシステム構築へと変わってきているので、そこも人材の教育が必要です。SI共創人材と称して、来年から実施予定です。SE向けにはもともと充実した研修があるので、コースとして新設するのではなく認定制度を設けることなどを考えています。

技術者だけではなく、セールスやマーケティングの人材も必要です。すぐに社内で育てられないので、キャリア採用も含めて強化していきたいと思っています。また、ビジネス共創人材やサービス創造人材は特に不足しているので、社内での育成だけでなくキャリアで採用したいという思いもあります。今まで我々が行ってきたビジネスモデルから変革の時なので、外の人が入って新しい風を入れてもらい、いろいろと議論しながら新しいものを作っていって欲しいという思いがあります。

—— マーケティングやセールスなどのビジネス職も必要ということですね。

セールス職の人はこれまで親会社から来てもらうことが多かったので、今までは新卒でセールス職を採用していませんでした。ですが、やはり独自のビジネスモデルを打ち立てて、お客さまと深く関係を構築しながらプロジェクトに取り組んでいきたいと思った時に、事業モデルをしっかり理解した上でセールスやマーケティングができる人材が必要になります。

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どんな経験も次のキャリアにつながる

—— 代表ご自身も中途採用で入社されて、今までキャリアを築かれてきたと思います。ご自身のキャリアの中で、意識されてきたことはありますか。

私自身のモットーは「人間万事塞翁が馬」です。意図しない仕事に就くこともありましたが、それも何かの経験だなと思って腐らずに真剣に取り組んできたことで、ある程度結果が残せたのかなと思っています。

当社の前身である住友金属子会社の住友金属システム開発という会社に中途で入社したのは、32歳の時でした。私は地元の宮城県にUターンをするつもりで、当時仙台に事業所を作るという話があったのでSEとして入社をしたのですが、まだ立ち上げが難しいから茨城県の鹿嶋で研修を受けてくれと言われて、そちらに行くことになりました。そのうち仙台の話がなくなってしまい東京に異動になったのですが、行く直前になって初めて営業職だと言われたんです。そこでも「まぁやってみるか」と思い営業を2〜3年やりました。一通り経験した後に自分が取ってきた仕事でPMに戻ったのですが、その後も通信系や金融系、製造系などさまざまな業界向けの仕事をし、多様な経験を積んだことが今につながっていると思います。

私はもともと大学でソフトウェアを学んでいたので新卒で入社した会社でもソフトウェアの仕事をするつもりだったのですが、入社後にハードウェアの設計をやるように言われて。でも、ハードの経験も今のソフトの仕事に役立っていると感じています。

このような経験から、どんな仕事でも真摯に取り組む姿勢が重要だと私は思っています。真摯に取り組めば、環境が変わった時にそれが花開くことがきっとあります。キャリア採用で入社いただく方は、既にいろいろな経験を積まれていると思うので、当社にてさらなる活躍を期待しています。

—— 今のお話からも繋がりますが、キヤノンITSで活躍できる人材像・求めている人材像があれば教えてください。

既存の組織に刺激を与えてくれる存在という意味で、キャリア採用は重要だと位置付けています。そのうえでキャリア採用の方に期待するのは、これまでその方が培ってきた専門性と経験値ですかね。

現在の当社の社員数は3800人ぐらいなのですが、この規模になれば「自分にはこういう強みがあります」という人であれば、その強みが活かせるところが絶対あると思うんです。なので、何か自慢できることがある人に来ていただきたいですね。もともとは、いくつかの会社が統合してできた会社なので、違う文化を受け入れやすい文化がありますので、ぜひこれまで経験を活かして活躍して欲しいなと思います。

—— 最後に、キヤノンITSへの入社を考えている方にメッセージをお願いします。

最初にも申し上げましたが、社員が実力を発揮できる環境を作るのが私の仕事。私自身はそういう環境を作っていくので、ぜひ皆さんには思う存分チャレンジしていただきたいですね。

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